本当の自分はどこにいるのだろう

うちの塾が所属する団体のある先生から手紙が送られてきた。
見てみると、昨年末同じ業界の結構有名な先生がわいせつ事件を起こした、という新聞記事が入っていた。中2の生徒に後ろから抱き付いてしまったんだそうな。


毎月読んでいる業界唯一の雑誌があって、自分も依頼を受けて過去に二度ほど寄稿させてもらったことがあるんだけど、事件を起こしたのはそこで連載を持っている先生だった。

その先生も30代で、たぶん独身だったような。
そういうのがかぶってしまうと俺もいつ周囲からそういう目で見られるかわかったもんじゃない。南海キャンディーズの山ちゃんみたいにそれを売りにするわけにもいかない。

新聞記事にはこの教師は自分の生徒のネタをホームページに書いていたうんぬん、と書いてあったが、俺だって生徒の面白いネタがあったらこのブログに時々書いている。
今うちの塾の生徒は女子が9割で完全に女子校化していて、最近だっていろいろ面白いことがあったので「なんだかなぁ」的なネタをここで書いてみようかと思っていたのだが、怖くて書けなくなったしまった。何がセーフで何がアウトかわからない。


記事読んでみて、多少なりとも人となりを知っている自分ならともかく、業界に関係ない人にとってみれば「変態破廉恥教師」の一言で終わってしまう話で、世間からはこんなバッサバッサ簡単に切られちゃうんだなぁってことを実感する事件だった。

でも言ってみれば、自分もこのブログで芸能とかスポーツとかについて書きたい放題かいてるわけで、言われる側からするとこういう感じなわけだ。仕方の無いことだ。


今俺は生徒との距離感を楽しく保てていると思う。
それは俺がもう充分年をとったし、容姿も完全に生徒たちにとって見ればおっさんで「キムタク(木村拓哉)と同い年」「藤木直人と同い年」といって笑いが取れるんだからおのずからわかっていただけると思う。

でもこれは自分の中で「狙っていた線」だったのだ。昔は。

今から10年以上前、まだ塾の助手で自分が20歳前、ちょうどnobu、kei、hyguの定例3人組と出会うちょっと前位の頃、女子生徒との距離感に悩み果てた時期がある。
それは年齢が年齢、生徒にとってみれば自分がいい「おにぃさん」だったからだ。
当時自分は、自分が先生なんて呼ばれるのはおこがましいという理由で、生徒には「俺を先生と呼ぶな、おにぃさんと呼べ」と言っていた。だから定例3人衆も、この前書いたSもMもミキちゃん(仮名)もみんな俺のことを「おにぃさん」と今でも呼ぶ。でもそれも、今から考えてみれば良くなかったのかもしれない。
男子生徒に優しくするのはかまわない、でも女子生徒に同じように接していると、相手が子供とはいえ難しい問題が起きる。中学生の生徒なんか自分と数歳しか離れていないのだ。こっちは教師を聖職だとガチガチに思っているからくだんの教師のように女生徒を抱きしめるなど考えもしなかったし、当時大学のマドンナを真剣に想っていたから(本サイト「HEART」参照)恋愛対象になるはずもない。
ただ自分の誕生日はバレンタインデーと3日しか離れていない不運も重なって、当時バレンタインデーは自分にとって憂鬱な日にすらなった。今となってみればもったいない話だ(ここは笑う所です、笑ってもらわないとシャレにもなりませんw)。
コンビニで買ってきた義理チョコを教室でくれる分にはよろこんで受け取れる。でもなかには、どんなに鈍感な俺でもわかりやすすぎるくらい想いつめた表情の子が必ずいた。授業の後で呼び出されることもよくあった。
「ありがとう」精一杯の感謝の心をこめた言葉の陰で、深く悩んだ。
基本的には気づかないフリをした。でも、袋の中に手紙が入っていればそうもいかない。真剣に返事を求める子も中にはいた。
そもそも今となってみれば簡単な話なのだ。大学のマドンナの写真でも使って「彼女がいる」と普段から公言してればこんなことには初めからならなかったのだ。どうしてそれに気づかなかったのか。
ただ当時の自分は、生徒に対してそんな必要な嘘すら許さなかった。
ただの淡い想い出にしてくれれば何の問題も無かった。でも中には、これが原因で塾を辞めてしまう子もいた。これは本当につらかった。どうしたらいいのか本当にわからなくなった。
そして今でも本当に申し訳なかったと思っているのが、手作りのチョコをくれた子が突然塾をやめてしまい、おかしいなぁと思ってもらった袋をよく調べてみたら、手紙が入っていたのだ。返事を求められていた。結果的に、その子の心を無視したことになってしまった。

これは最後のダメージだった。

一体どうしたらいいのか。
悩みに悩んで出した結論が、生徒の恋愛対象にならない容姿になる事だった。
しつこいが、この時なんで俺は、偽装彼女を作るという結論に至らなかったんだろう。そっちの方がずっと楽だったのに。馬鹿だねはっきり言って。
容姿が変でも、生徒に対する姿勢が真剣なら生徒たちはついてくるだろう、そう思ったのだった。それから服装をちゃんとするのもやめ、髪型も塾ではちゃんとセットするのをやめた。そして気がついた頃には、そういったことで困ることも無くなっていった。


そんなわけで今は生徒たちとも余計なことで悩むことも無く楽しく向き合えるようになったが、こんな事件が起きた今となっては、この容姿は逆に危険となってしまった。
今の授業は生徒たちは常に爆笑だ。「先生ごきげんようの司会できるよ」「先生なんで芸人さんにならなかったの?」と時に言われるまでになった。ただ正直言ってこれも本当の俺のキャラクターではない。
実際普段の自分と接しているみんなは決して自分のことを「面白い人」とはいわない。個人的にはテレビのおもしろい芸人さんが素だと物静かなのと一緒だと思っている。
ただ山ちゃんキャラでは生徒たちがいくら笑ってくれても保護者や周囲からの不審の目が怖くなってきた。自分だって多少は見えっぱりにできているから、ミキちゃんのような当時の生徒にがっかりされたくはない。だから会いたくないと言ったのが真相。

本気で肉体改造しようかなぁ、書きながらどんどんそう思ってきた今である。
さぁ、授業だ。風呂はいろう。